たのしいたけで厚真の森を護る。北海道産原木しいたけの価値と魅力を届けたい

たのしいたけで厚真の森を護る。北海道産原木しいたけの価値と魅力を届けたい
ミズナラの森が広がる、北海道厚真町。100を超える池や沼が点在する水の豊かな町です。人口約4,400人のこの町では、農閑期を利用して原木しいたけの栽培がさかんでした。しかし生産者の高齢化などで収穫量も落ち、今では2軒の農家のみ。これは原木しいたけの存続と森を護る、林業の未来をかけたプロジェクトです。

々を傷つけない配慮をするために人馬だけで切り出すのです。私たちは数年前から、生産に使う原木の一部を馬搬での調達に切り替えています。厚真の森と原木を運ぶ馬や人、しいたけを育てる私たち、そしてそれを食べる人。たのしいたけには、それらを広くつなぐ使命があるように思うのです。たのしいたけに親しみを持ち、豊かな森の存在を感じながら食べてくれる人が増えることで、昔ながらの栽培方法を絶やさずに持続していける。私たちはそう信じています。

( 画像提供:黒川ひろみ)

▲厚真町で「馬搬」という手法で林業にチャレンジしている西埜さん
原木栽培が激減していく現状と理由

ではなぜ、原木栽培が減少していったのでしょう。その理由は複数あります。その大きな要因は重労働、管理の難しさ、薄利の3つ。その実情を挙げてみました。

1. 重労働

厚真の森から切り出した樹木はその場でカットされ、原木に適したサイズに調整します。その数、なんと1万本。それを毎日休みなく700~900本ずつ手作業で運びます。この原木は1本5~10キロほど。前述した菌床栽培の菌床一つの重さが2~3キロなのに比べ、倍以上の重さがあります。冬期間に行われる植菌作業も約1万本の原木を森から調達するところから始まり、ドリルで穴を開け、1本ずつ菌を植えていくのです。また6月には植え付けた菌がまんべんなく行き渡るよう、1万本すべての原木を組み替える「天地返し」の作業があり、生産者にとって体力・持久力が求められる厳しい仕事なのです。

2. 管理が繊細

菌床栽培が植菌から3ヶ月で収穫できるのに対し、原木は半年以上かかります。ただ寝かせるだけではなく、温度・湿度に気を配り風通しをよくして、雑菌の繁殖を防ぐなどのきめ細やかな管理が必要です。収穫できるように原木が育ってからも、一定の温度や湿度の条件を満たし続けないとしいたけは成長せず、わずか数℃の違いで収穫量に大きな差が生まれてしまうのです。

3. 利益率の低さ

これほどまでに手間ひまがかかる原木栽培ですから、生産の原価が非常に高くなります。菌床栽培の生産コストが43%に対し、原木栽培は種菌費・原木代だけで全体の60%以上を占めるため、労働時間あたりの所得が100~200円となり、時給150円ほどで働いている計算になってしまいます。(引用:農業協同組合新聞)しかし、マーケットでは菌床しいたけとの差別化を消費者へ呼びかけきれず、安さ優先の市場価格なのが現状。原木の価格も高騰しており、厳しい経営を強いられるため、原木栽培をあきらめる生産者が急増してしまいました。

たのしいたけを生産する私たちについて

・ごあいさつ

こんにちは。このプロジェクトオーナーで株式会社たのしい代表の堀田祐美子と申します。私は、厚真町で五代続く農家の夫と結婚し、米、しいたけ、ハスカップ、小麦、大豆などの生産に携わっています。そんな私が会社を興したのは一年前。希少になってしまった原木しいたけの存在とおいしさを、多くの人に知ってもらいたいと立ち上げました。

( 画像提供:くらしごと)

・農作業することの楽しさ

たのしいたけを育てることは、とてもとてもたのしいです。もちろん、大変なこともたくさんあります。何百本もの原木を水に浸し、眠っていたしいたけ菌を起こす。出てきたしいたけを収穫する、また休ませる、を手作業で繰り返す日々。暑くないか、寒くはないか、乾燥していないか、困ったことはないか、たのしく育っているか、いつもいつも気にかけ見守っています。だからこそ、ポコンと顔を出したときの喜