「紙の」雑誌を新しくつくり、ゆっくり考える場を取り戻したい。(宇野常寛責任編集)

「紙の」雑誌を新しくつくり、ゆっくり考える場を取り戻したい。(宇野常寛責任編集)

1. いまあえて「紙の」雑誌を新創刊します

いまのインターネットは「速すぎる」。速すぎる情報の消費速度に抗って、少し立ち止まって、ゆっくりと情報を咀嚼して消化できるインターネットの使い方を考えてみたい。いま必要なのは、もっと「遅い」インターネットだ──。

こうしてはじまった「遅いインターネット」計画。この1年、私たちはあたらしいウェブマガジンの運営と、タイムラインの潮目に流されない豊かな「発信」のちからを養うワークショップを継続してきました。

そして、2021年。この運動の次のステップとしてあたらしい「紙の」雑誌を創刊します。うまくいけば、定期刊行にしたいと考えています。(4ヶ月〜半年に1回の頻度を考えています。)

タイトルは「モノノメ」にしました。
由来は春の季語の「物の芽」で、いろいろな植物の芽の総称です。そしてそこに「ものの目」という意味も込めました。僕たちはいま、人の目のネットワークの中に閉じ込められているところがあるので、別の目で世界を観てみたい。そんな思いを込めています。

コンセプトは「検索では届かない」。タイムラインの潮目を一切無視した、ほんとうの意味でのインディペンデント・マガジンを目指します。
SNSで既にシェアされている話題にどう反応するとたくさん座布団がもらえるかばかり考えている人は呼ばない。
誰かが設定した問いに大喜利的に応える今日の言論状況とは真逆に、自分たちが問いを立てること、そして「……ではない」ではなく「……である」という言葉で語ることをルールに紙の雑誌を再起動します。

セールス的に問題がなければ(もしくは十分に広告が取れれば)Amazonには置かない。大手書店チェーンにも(たぶん)置かない。インターネットの直接販売と、このコンセプトを理解してくれる施設でのみ販売します。初版は絞って5000部くらい。基本的には増刷しない。そしてこの5000部をほんとうに届けたい人5000人にしっかりと届ける。ただ売って終わりにしない。そのあと読者と一緒に考え続ける。そんな雑誌を新創刊します。
2.『モノノメ vol.1』はこんな雑誌になります

[巻頭ルポ]2021年の東北道

あの震災から10年、そろそろもう次のステージへと考えたくなるタイミングだからこそ、もう一度しっかりとあの土地たちを歩いてみたい。そう考えた僕(宇野)は、復興にかかわる二人の知人を訪ねて仙台へ、石巻へ、そして気仙沼へと足を伸ばしました。そこで出会ったうつくしい風景と、グロテスクなものたちについて、文章にまとめました。

【特集】「都市」を再設定する(仮)

創刊号の特集は「都市」を選びました。僕たちが生きている間に都市について起こるたくさんの変化ーーメガシティへの人口集中化、気候変動により高まる災害リスク、そしてコロナ禍が後押しするデジタルトランスフォーメーションーーなど、人類がずっと使い続けてきた「都市」という環境が、いま大きな転換を迎えつつあります。
国内外で進行しているその不可避的な変化の中で、僕たちはどんなふうに空間の豊かさや多様性を活かした暮らし方を取り戻していけるのかを考えていきます。

[座談会]「都市」を再設定する──復興、五輪、地方創生|饗庭伸×安宅和人×菊池昌枝×渡邉康太郎

[論考]松田法子 湧出東京──生きのびる土地

[論考]柳瀬博一 タイトル未定

[エッセイ]推しが山いっぱいに増えてくれたら死ぬ──生き物たちと共に里山を作る|東千茅

[特別企画]虫の眼、鳥の眼、猫の眼──人間外から都市を読む

[対談]〈もの〉が