歴史的建造物の再生プロジェクト x The Japan Times

歴史的建造物の再生プロジェクト x The Japan Times
日本中に存在する歴史的建造物が、朽ちることなく、たくさんの人に見守られ、手入れされ、使われ、次世代に引き継がれることを願い、歴史的資源の活用を通じた文化の継承を進めるプロジェクトです。

代だけでなく、次の世代が相続しきれるかどうかという問題があちこちで起こっています。国や自治体が保有する場合も、少子高齢化の進行にともない、歴史的建造物の保存のために必要な費用の捻出は難しくなるばかりです。神社仏閣も、昔と違ってだんだんと氏子や檀家が継がれなくなってきました。

いずれもつまるところは、「お金」が最大の問題です。そこで他力野さんは、ひとつの建物の維持保存にかかるお金を、その建物自体が生み出せれば良いのでは、という考えに行き着いたのです。そうすれば、誰かが身銭を切る必要も、税金を使う必要もなく、自立走行できるわけです。これまでにも国や自治体所有の歴史的建造物の民間による活用という事例はありましたが、大半は所有者である国や自治体から運営にかかる予算を得て民間が運営するというものでした。そうではなく、民間が運営することで利益を生み、逆に所有者に利用料を支払い、それを修繕費や維持費などに充てていくということができれば、歴史的建造物の持続可能な維持保存が可能になります。

このままだと今後多くの歴史的建造物が空き家状態となり、手入れもされないまま放置されたり、維持不可能になり取り壊しになってしまったりという事態になりかねません。そうなってしまう前にいちはやく、歴史的建造物にマネタイズできる施設運営を取り入れていく ­−−− その舵取りをするのがバリューマネジメントです。
■残すための工夫

まずバリューマネジメントが手がけたのは、他力野さんの前職の経験も活かし、歴史的建造物を結婚式場や宴会会場として再生するというプロジェクトです。例えば、国指定登録有形文化財の建造物を結婚式場・宴会場として活用できるようリノベートして生まれた、鮒鶴京都鴨川リゾート。鴨川が眼前に流れるこの風情ある建物は、150年の歴史ある元老舗料理旅館です。神戸迎賓館旧西尾邸は兵庫県の文化財に指定された1919年築の西洋建築で、バリューマネジメントはこれを結婚式場・レストランとして運営しています。

しかし、この手法にも限界がありました。大きな都市にある歴史的建造物は、もともと建設当初から商用利用を目的として建てられていたり、そうでなくても多くの人の出入りが想定されたつくりになっていたりして、比較的広々としており、収益性の高い運営が可能ですが、地方の場合、建物ひとつひとつが小さく、単体では勝負できないことが多いのです。また、地域の人口も少ないというハンデもあります。

そこで考えたのが、「街自体を商材として捉えて事業化する」ということでした。「建物が連なったものがまち並み。一棟では難しくても十棟まとめてなら収益化の可能性が見えてきます」と他力野さん。また、結婚式やレストランなど、主にそこに暮らす人に向けて特別な場所を提供するだけでなく、宿泊施設という形で外から人を呼び込むという視点を持つことで、地方の歴史的建造物とそれらを取り巻く街全体を活性化することができます。こうしてこれまでにバリューマネジメントが手がけた地域の中でも、日本初の泊まれる天守として世界中のメディアにも取り上げられた大洲城とその城下町の事例をもう少し詳しく見てみましょう。
■街ぐるみで街全体を活用

愛媛県大洲市は、松山から南に1時間のところにある人口42,000人の小さな街ですが、国指定重要文化財や国登録有形文化財、自治体の指定文化財などを数多く有しており、歴史を感じられる風情あるまち並みが特徴です。もともと観光地というわけではないこの地に人を呼び込み、観光消費額を増やして、歴史的建造物とまち並みの保全にかか