しかし、僕に起きたことが、虐待にあたるとは思ってはいけないという、自己への抑圧がありました。そんな自分をどう感じてきたかを、ありのまま受け止めてくれ、判断しない、強くて優しい大人たち、仲間たちが当時の僕を支えてくれました。自分の生い立ちや過去を振り返った時、加害者である人の多くは、実は当事者で被害者だということも気づきました。これらの背景がある方が、実際はたくさんいて、僕も親も、そして誰かの中にも、声なき声があるのではないのかと思いました。「誰も悪くないかもしれない。」今社会に何が必要なのか。「誰もが守ってもらえる」「守る」というその言葉の意味を大きく、広く、そして深くしていく必要がある。その願いがあなたの願いに、そしてみんなの願いに。それを実現するために、具体的な活動として2015年「子はたからプロジェクト」を発足しました。
まず国内の状況を報告します。
1.児童虐待の対応件数(目に見える虐待)
2.児童虐待でかかる社会のコスト
3.問題の複雑さ・難しさ
令和元年度児童虐待相談対応件数
(速報値)[PDF形式:827KB]
「児童虐待報告相談件数」(※児童相談所等対応した件数)2019年時点では過去最多を更新。この増加傾向が必ずしも悪いわけではなく、虐待が「表面化してきた」ということだと考えています。①2006年に配偶者間の暴力(面前DV)が心理的な虐待になること(児童虐待防止法の改正)②2013年に警察がDV事案などへの積極的介入(体制の強化)③通報、相談ダイヤルが10桁から3桁「189」に。また痛ましい事件などの報道もあり徐々に社会全体の意識も変化したことが増加した要因だと考えられます。このグラフは「相談・対応の件数」であって、虐待が起きている正確な数、その起きる背景については完全にはわかっていません。
イメージにすると….
2012年に、虐待をコストとして視える化するための調査研究が行われました。乳児期〜未就学児で死亡するニュースがありますが、事件や通報するよりもっと早い段階で、虐待が起きないような取り組みを広げていかなければなりません。
2012年に社会が負担したコストが試算されました。
<データ引用・参考>
※1)科学研究費研究成果報告書
※2)産経ニュース(2014.10.1)
児童養護施設の運営費などの「直接費用」と「間接費用」に分けて計算。間接費用は、①自殺や虐待により死亡したため得られなくなった将来の収入②トラウマ(心的外傷)の治療に必要な医療費③教育機会を奪われたことによる生産性の低下④離婚や犯罪生活保護費の増加など。児童相談所が児童虐待として相談対応した件数は2012年時点で6万6701件(現在は19万件)「2012年時点で児童虐待が年額1兆6000億円もの社会的損失をもたらす」ということが明らかになりましたが、この推計は、
・施設入所中の児童の医療費
・自傷行為や虐待による医療費や後遺障害
・離婚に伴う男性の生産性損失
などは含まれていません。
加害者・被害者も「それが虐待」だと気づきにくい、あるいは隠したり、認めなかったりします。
育児ストレス(PSI)を図にしたものです。育児に限らずですが、僕も含め、親(養育者)には本人も気づかないような負担があります。その負担(ストレス)が一定を越えると、結果的に子どもに虐待を行ってしまう。という現象が起こります。「これだけやれば虐待はなくなる!」ということではなく、虐待が起きないように、家庭や養育者の、ストレスや負担に対して補償をしていくという考え方や、