日本の漆文化を守り、育む取り組みを応援したい!

さんの言葉に背中を押され、2009年に浄法寺漆産業を立ち上げました。浄法寺は岩手県の地名で、代表的な漆の生産地であり、浄法寺塗と呼ばれる色つやの素晴らしい漆器の産地でもあります。

浄法寺漆産業のあゆみ

会社である以上、国産漆の振興が目的とはいえ、ビジネス的にも持続可能でなければなりません。まず松沢さんが手がけたのは、漆の原液を仕入れて精製・加工し、販売するという事業です。しかし起業当初は、まだまだ漆、ましてや輸入品に比べると高価な国産漆の需要は少なく、新しい売り方、販路を見つけていかなければ売れ残ってしまう状況でした。そこで5グラムや10グラムという少量からでも購入できるようにチューブ入りのものを用意し、さらにオンラインショップでも購入できるようにしました。ガラスとのコラボレーション作品を生み出したり、自動車や電車の内装デザインに漆を活用したりと、漆の新たな需要を開拓したり、国産漆の現状や漆の良さを伝えるための講演活動も手がけました。

数年前からは、金継ぎと呼ばれる、割れたりヒビが入った陶磁器を漆を接着剤にして修復し、金などの金属粉でつなぎ目を装飾して仕上げる技法が日本国内でブームになっただけでなく、海外にも知られるようになったことから、少量ずつ購入可能なチューブ入りの漆がよく売れるようになったそうです。

こうして松沢さんの精力的な活動が少しずつ実を結ぶ中、風向きを大きく変える出来事がありました。2018年度から、文化庁が国宝・重要文化財建造物の保存修理には原則として国産の漆を使用することを決定したのです。国産漆の保護という観点からも非常に意義のある方針ですが、これにより新たな問題に直面しました。そもそも全国的にも、岩手県内でも、漆の産地自体が減ってしまっていたので、今度は生産が追いつかなくなり、漆の原液の入手が困難になってしまったのです。

必要なのは仲間、そして技術

国産漆の自給率を上げ、安定的に供給できるよう、生産量自体を増やす必要が出てきました。しかし、新たに産地をつくるとなると、現在でも3人という規模の会社だけでは到底無理です。たくさんの人の手を借りなければ、苗木を育て、植樹して育てていくという大がかりなプロジェクトを遂行することはできませんが、これを取りまとめるだけでも大変な労力です。

そこで2018年に設立されたのが一般社団法人次世代漆協会です。盛岡市で林業を営む細越確太さんが代表理事を務めるこの団体は、漆の木の生産を担っています。松沢さんと細越さんの出会いは、まさに漆の木が結んだ縁でした。細越さんが森の中での作業中に漆の木を見つけ、どうしたらいいかと松沢さんに相談の電話をしたことから意気投合し、漆の木の生産を進めようという話にまで発展したのです。作業に必要な人手を集めるため、次世代漆協会では植樹イベントなどを企画して参加者を募ったり、全国の苗木業者と提携して漆の木の苗を育ててもらったりといった活動をしています。

こうして高まる文化財修復のための需要に対応していくだけではなく、漆の良さをアピールし、新たな使い道を提案していくことも、人々の暮らしの中に漆を生かし続けるためには忘れてはなりません。その部分を担うのがNPO法人のウルシネクストです。理事長を務めるのは、マーケティングの専門家の柴田幸治さん。松沢さんと柴田さんの出会いの場は、2018年に東京ビッグサイトで開催されたギフトショーでした。漆とはちょっと珍しいな、と浄法寺漆産業のブースで足をとめた柴田さんが、松沢さんの話に耳を傾けたことがはじまりでした。

こうして確