こんにちは。
長野県・高遠で酒蔵を営む 株式会社 仙醸(せんじょう)と申します。
お読み頂きありがとうございます。
この度、私たちは、新たに導入した設備を使い、現代ではほぼ流通していない「レア酵母」での日本酒造りに挑戦し、皆様に「夏の新酒」6種をお届けしたいと思っています!
とは言っても、
「レア酵母とは何ぞや?」
「新しい設備って?」
「夏に仕込む日本酒って…美味しいの?」
など疑問も湧くかと思います。
私たちがなぜこのような挑戦をするのか、
また、この挑戦をする前段階で乗り越えなければならない課題があった事など
「仙醸とSENJO CRAFT LAB」に関する背景も交えて、お話しさせて頂きます。
「酵母」とは、食材を発酵させる働きをもつ微生物のことで、お米から日本酒を作るのには欠かせない存在です。同じお米や水を使っても、酵母が違えば、日本酒の味や香りが変わります。
さて、私たち醸造メーカーが日本酒に使用する酵母のほとんどは、
日本醸造協会が管理する「きょうかい酵母」であることをご存知でしょうか?
きょうかい酵母のほとんどは、元々は日本各地の酒蔵から分離された酵母を、日本醸造協会が純粋培養したもの。
分離された順に1号から番号が振られ、現在は19号まであります。
それぞれの時代のニーズに合ったお酒を醸す酵母が、きょうかい酵母となってきました。
私たち醸造メーカーは通常、これら1~19号(各号が改良されたものも含めると約30種類)の酵母から選定して仕入れ、醸造します。
しかし実は昨今、業界で一般的に使われている酵母は7~19号。
仙醸が通常使っているのも7号以降の酵母です。
1〜6号の酵母で醸したお酒は、
各酵母の出身蔵がそれぞれ売り出すことはあるものの、近頃ではなかなか出会えなくなりました。
というのも、
1号の酵母が発見されたのは、110年以上前の1906年(明治39年)。
6号でさえも、出自は1930年(昭和5年)。
その後、時代の移り変わりと共に食生活や好まれる味わいが変化・多様化し、求められる日本酒・使われる酵母も変わっていく中で、1~6号の酵母は、いつの間にか「珍しい酵母」になったのです。
これら6種類の酵母を使った日本酒を飲んだ事がある人は、今では少ないのではないでしょうか?
また作り手としても、ほとんど扱った事のない酵母たちです。
6号酵母を使用する酒蔵がここ最近で再び増えつつあるものの、
1~6号の6種類すべてで醸している酒蔵はほとんどありません。
一体、この6種類の酵母で醸したら、どんな味や香りのお酒が出来るのか…。
私たちだけでなく、お酒好きの方なら、好奇心をくすぐられることでしょう。
こうしたことから私たちは、これらの酵母を
と呼ぶことにし、
6種類すべての味わいをリバイバルさせ、
皆様と共に飲み比べて楽しみたい!と考えました。
(6種類の酵母の特徴については、後半でご紹介します!)
小ロット夏仕込みの日本酒とは
しかし、レア酵母6種の飲み比べを実現するには、実はこれまで高いハードルがありました。
それは、日本酒の仕込みの規模。
一般的な酒造りでは、一度に最小でも1500Lのお酒を仕込みます。
(四合瓶で2,000本以上分に相当!)
この規模のままレア酵母で醸すとなると、2つのリスクを生じさせます。
1つは、醸造段階でのリスク。レア酵母での醸造は、段取りや温度管理などの面で、普段の酵母とは勝手が違う可能性も考えられます。すると通常の規模で仕込んだ場合、もし失敗し