語を母語としない方に必要な情報が届かなかった反省のもとに生まれた、ユニバーサルデザインとしての表現であると知り、より多くの人にとってわかりやすい日本語という視点で、声明の言葉を再検討しました。また、項目のもとになっている権利条約の条文も紹介しています。子どもが感じている気もちや日常の出来事と、一見遠くに思われる子どもの権利はつながっています。子ども自身が大切な存在で、その大切さには根拠があることを伝えたいと考えました。
特徴のふたつめは、子どもが気もちを書き込むことができるスペースがあることです。コロナの日々のなかで、子どもは、たくさんの気もちを我慢していると思いました。例えば日記に思いを書きだすとスッキリするように、絵本の書き込みスペースに気もちを書きだすことで、子どもがこの危機を乗り切る助けになればと考えました。それを大人が読むことで、ともに語り合うことができるように……そんな願いをこめました。
本プロジェクトの元となる自主制作のワークブック絵本
2020年9月25日に発刊して以降、絵本は口コミで広がり、複数の新聞やメディアで紹介されました。改訂を重ね、現在までに4版約3,000部を販売しました。
手に取ってくださった方から、さまざまなご感想もいただいています。
・「この絵本がなければ、子どもの気持ちを分からなかった」 読み聞かせのなかでの小学生の娘さんの言葉にはっとさせられたと、保護者の方。
・「大切なことが書いてあるから学ばなくては」と手に取ってくださった保育所の所長さんは、保育所の行事を行うかどうか、感染対策と子どもの最善の利益でのバランスで悩んでおられました。
・6回かけて、母子生活支援施設の子どもと絵本の書き込みのワークをしてくださった職員さんは、子どもたちは「聴かれる機会があるから意見を言うのだ」と気づきを伝えてくださいました。
学校現場でも、子どもの権利条約の学習に位置づけて、絵本の紹介と子どもが気持ちを書きこむ授業が行われています。
このほかにも、市民団体の方、福祉施設の職員、政治に関わる方等、さまざまな方が購入してくださいました。
権利が制限されている現在だからこそ、子どもの権利の視点を広げようという方たちのアクションに勇気をもらいます。
また、絵本の売り上げの一部を、夕刻を支える場(学校や放課後児童クラブが終わってから夜にかけての時間や学校が休みの期間に、子どもたちが安心・安全に過ごせるような取組をおこなっている場所の総称)に寄付することもできました。
その一方で、この絵本の抱える課題にも気づかされました。
現在の内容では、大人のサポートなしに小学生が一人で読むには難しいということ。
そして書き込みスペースがあることや、背表紙のない大型の冊子であるという理由で、図書館に配下するのが難しい、ということです。
図書館に置けないということは、養育者(大人)が購入しない限り、子どもがこの本と出会うことができない、ということです。また、単に図書館における形に変更したとしても、大人のサポートなしに読むのが難しい内容であれば、伝えたいことが子どもの元まで届きません。コロナ禍が長引き、もともと脆弱な環境にいた子どもの状況は、ますます苦しくなっています。子どもの自殺が増えていることにも危機感をもっています。
このような課題を感じていた中で、ひだまり舎さんと出会い、本当に必要としている子どもたちにこの絵本を届けるため、ひだまり舎さんのお力を借りて、新たに制作チームを結成し、内容を再構成したハードカバーの絵本をつくるこ