コロナ禍で置き去りにされがちな子どもの気持ちを聴く絵本を、より多くの人に届けたい

コロナ禍で置き去りにされがちな子どもの気持ちを聴く絵本を、より多くの人に届けたい
後回しにされがちな「子どもの権利」。2020年国連子どもの権利委員会が出した声明を元に、自主制作で作られた子どもたちの声を聞くための絵本を、より多くの人に届けるために、内容を再構成、ワークブックをそえたハードカバー絵本として刊行し、「子どもの権利」を社会全体で考えたいと思っています。

る平野裕二さんの発信で、私は、国連声明の存在を知ります。声明を読み、私は、自分の置かれている状況をようやく理解し、頭が整理されていくのを感じました。私には、自分が最も苦しかった中学生の頃に「子どもの権利条約」を知り、励まされたという経験があります。子どもの権利条約と通底しているコロナ禍の国連声明も、その頃と変わらず、この世界がどうあるべきかという基準を示していました。

声明は、11の項目により構成されています。コロナ禍において奪われやすい子どもの権利とそれを保障していくうえで大切にする視点が述べられています。

休み・遊ぶ権利が2番目にきていることに、こうした非常時において、子どもにとっての休息や遊ぶことがどれほど大切なのか、教えられます。

感染対策が重視されるなかで子どもの権利の視点を置きざりにせず最善の利益を追求すること(項目1)、子どもの生きる・育つ権利の保障をとめないこと(項目3から6)、どんな時も子どもの声を聴くこと(項目10・11)、そして、最もつらい状況におかれた子どもたちの立場から考えていくこと(項目7)…A4の用紙2枚ほどの声明に、権利条約の理念はぎゅっと盛り込まれていました。

当時、子どもの居場所活動を運営していた人たちは、どのように活動を続けるかを試行錯誤しておられました。「ステイホーム」が呼びかけられるなか、家庭が安全でない子どもの支援をされてきた方たちは、なんとか子どもたちを支えようとしていました。感染対策を優先することだけを考えていたら、失われてしまうものがある…。先が見えない時期だからこそ、声明は、子どもにとって何が一番大切かを考えるうえで、その方向性を指し示すコンパスのような存在になるのではないかと思いました。

とはいえ、難しい言葉で書かれた国際文書を読むのは大人でもエネルギーが必要です。
もう少し読みやすい日本語にしてみよう。

2020年のこどもの日を目指して、友人とともに中高生の子どもから大人が読めるかんたんな日本語訳を自身のサイト(ちいさなとびら)で発表したところ、多くの反響がありました。

「もう少し小さな子どもが読めるように」というお声もいただき、友人のmomoさんに11の項目を絵にすることを依頼していました。ⅿomoさんの描く子どもは、伸びやかに一人のひととして生きています。子ども自身の内側にある強さへの信頼があって、声明を絵にすることを考えた時に真っ先にmomoさんが浮かびました。

最初にmomoさんから届いたのは、子どもたちが休んだり遊んだりする権利にかかわる項目2を絵にしたものでした。ピンクのくまのそばでくつろぐ女の子を見て、私自身がホッとした穏やかな気もちになりました。もし、これが絵本になったら、こんなふうにホッとする時間を子どもにも大人にも届けられるかもしれない…そんなふうに思いました。

そこで、友人のmai worksのmaiさんに相談しました。ⅿaiさんは、自分で本をつくりたい人の本づくりをサポートされています。難しいテーマであっても、書き手と読者を丁寧につなげる作品をつくることへの信頼がありました。

こうして夏頃には3人での絵本づくりが始まり、オンラインミーティングを何度も重ね、2020年9月25日に自費出版で出版しました。

ワークブック型絵本の特徴のひとつめは、コロナ禍で奪われやすい子どもの権利を「やさしい日本語」で伝えているということです。当初は、「子どもにやさしい(child friendly)」ことを意識していましたが、「やさしい日本語」が阪神・淡路大震災で日本