今回の災害で悲しいことも、たくさん起きました。しかし、それだけでなく、災害が起こった事で気づいたこと、改めて大切にしたいこともたくさんありました。
この絵本で、災害が起こった現実と立ち向かう人々の強さ、また、人と人との温もりや繋がりの大切さを感じて欲しい。そして、今もなお大変な想いをされている被災者の方々へ希望を持ってもらえるような内容にしたいと考えております。
プロジェクトをやろうと思った理由
皆様はご存知でしょうか?
熊本県人吉球磨地方。球磨盆地を流れる球磨川に開けたこの地域は、司馬遼太郎が「日本で最も豊かな隠れ里」と紹介した、人を癒し、人を笑顔にする「お人好し」の農山村です。
その地が、2020年7月4日早朝にかけ、未曽有の集中豪雨に襲われ、花なる球磨川が氾濫し、空前絶後の甚大な被害を及ぼしました。被災された方々は、コロナ禍でボランティアが限られる中、今も必死の復旧に向かっておられます。
今回、このプロジェクトをやるきっかけとなったのは、2020年9月に人吉球磨豪雨災害の復興支援で「ひまわり亭」を支援先として下記のクラウドファンディングを企画したことでした。
熊本県南部豪雨で被災した「ひまわり亭」の復旧支援活動を応援したい!
皆様のご支援のおかげで無事に目標を達成し、支援期間中に、多くの方々との出会いやドラマがあり、たくさんのお話を伺う機会がありました。そんな中で、「ひまわり亭」を舞台に起こったドラマを絵本にして、今回の災害を全国の皆様に忘れられることなく知っていただきたい、気づいた大切なことを伝えたい、そして子ども達にも引き継いでいきたいと思ったからです。
人吉球磨地方独特の郷土玩具に、子どもの健やかな成長を願う縁起物として昔から親しまれているにキジ馬というものがあります。
今回、絵本の舞台となる「ひまわり亭」に、お店のシンボルでもある巨大なキジ馬がおりました。
重さ800キロ、長さ5メートルもあるキジ馬は、皆からは「キジ馬くん」と呼ばれ、たくさんの人に愛され、大切にされてきましたが、そのキジ馬くんも災害で流されてしまいました。
体験したこともない、想像をはるかに超えた災害に、多くの人が悲しみ、疲弊している中で、「ひまわり亭」代表の本田節さんは災害4日目から炊き出しボランティアを始めました。
家も何もかも失った方々に、せめて温かい料理を届けたいと命の食をお届けする日々。全国から支援物資も集まり、徐々にボランティアの仲間も増え、ひまわり亭は復興支援の拠点となりました。
そんな復興支援活動をしている中、流されたキジ馬が、はるか遠くの八代海に浮かんでいたのを、地元の漁師が発見したのです。
それを知った本田節さんの友人が、トレラーで駆け付け、無事にキジ馬は元の「ひまわり亭」に帰還しました。節さんはじめスタッフや地元の皆さんは、「お帰りなさい!」と涙を流してキジ馬を迎えたそうです。
キジ馬の体には、少々の傷はあったものの、ほぼそのままの形でした。
「キジ馬は、濁流の中、どんな思いで必死に泳いでいたのであろうか?さぞかし辛かっただろう。」
優しい人吉の人たちは、まるで自分の子供の被災のように思いを抱き、過酷な苦難を乗り越えて帰ってきたキジ馬に、どんな辛い試練にも、希望をもって耐え、生き抜いて前を向くことを学んだといいます。
このことは新聞やテレビで大きく取り上げられ、多くの被災者の方々の希望となったそうです。
そして今もなお「ひまわり亭」を訪れる人々にとっては、このキジ馬を見ることで、困難に耐えて、頑張ろうと、生き