はじめに
摩周湖は、北海道東部にある阿寒摩周国立公園内に位置し、中でも特別保護地区に指定され、北海道遺産としても最初に登録されています。優れた自然環境はもとより、古くから水源としても周辺住民の生活を支え続ける貴重な湖です。また、地形の性質上、流れ込む川も流れ出る川も無く、人による汚染の影響が極めて少ないという特殊性から、毎年水質調査が実施されています。1931年に実施された調査では、41.6mという世界一の透明度を観測し、現在でも世界有数の透明度を誇っています。1981年から、総合的な水質調査として国立研究開発法人 国立環境研究所が実施することに、1994年には、国連環境計画(UNEP)等の国際観測機関によって進められているGEMS/Water※の陸水監視システムのベースラインモニタリングステーションに日本の湖で唯一登録されています。
しかし、そのような摩周湖の水質調査も2018年を以って終了することとなりました。
そこで、摩周湖の麓とその伏流水の恩恵を受ける周辺流域である5町(清里町、別海町、中標津町、標茶町、弟子屈町)と関係機関が協力し、摩周湖環境保全連絡協議会を設立し、「摩周湖の守り人」として水質調査を引き継ぎ環境保全に挑戦しています。
※GEMS/Water ・・・・国連環境計画(UNEP)や世界保健機関(WHO)等の国際機関によって進められている、淡水水質監視プロジェクト。地球環境監視システムの陸水監視部門であり、全球をカバーする唯一の淡水水質監視プロジェクトです。
このプロジェクトで実現したいこと
本プロジェクトでは、摩周湖とその周辺流域の環境を保全するだけではなく、地球規模の環境変動を知るために蓄積されてきた貴重なデータを、過去とすることなく未来へと繋げていきたい想いから、日本で唯一の国際的観測地点である摩周湖の水質調査を継続していきたいと考えています。
また、摩周湖を美しい景勝地として、そして国際的な観測地点として守り続けるためには、訪れる観光客の皆様やこのプロジェクトをご覧いただいている皆様など、より多くの方々に本プロジェクトを知ってもらい、環境への意識を高めていくことが必要です。さらには、摩周湖とその周辺流域5町の環境保全は勿論のこと、周辺地域の発展にも繋げることが重要と考えています。
水質調査を継続し、摩周湖を後世へ引き継ぎ、周辺地域の発展に繋げたい!
これが、本プロジェクトを通じて私たちが実現したいことです。
第一展望台から見る摩周湖
裏摩周展望台から見る摩周湖
このプロジェクトをやろうと思った理由
立ち入りが非常に厳しく制限されている摩周湖は、「人が踏み入れることのできない湖」として、周辺3か所の展望台もしくは登山道から眺めることしかできません。また歌謡曲「霧の摩周湖」がヒットしたことで一躍日本中にその名が広がったことも相まって、「神秘の摩周湖」、「霧の摩周湖」のブランドイメージが定着し、年間約50万人が訪れる観光地として今も栄えています。
また、晴れた日には、湖面は藍を流したような独特の青色を見せ、その色合いは「摩周ブルー」と呼ばれ、多くの人々を魅了していることでも有名です。
調査風景
しかし、実はこの水質調査についてはあまり知られていません。
本協議会が調査を引き継ぎ、2019年は9月上旬、2020年は8月下旬に水質調査を実施しました。摩周湖は、GEMS/Waterに登録されている日本で唯一の湖として、長年にわたって世界中の研究者が活用できるデータを蓄積しています。この