日本料理の文化の「火」を残したい!

日本料理の文化の「火」を残したい!
創業81年の日本料理店の社長が、映像とコトバによる「文化の発信」に挑戦!季節ごとに変わる食材を、工夫をこらしながら最もおいしく料理する。日本が育ててきた日本料理の文化は、世界に誇れる〝日本の宝〟です。コロナによって飲食業界が苦しいいまだからこそ、日本料理文化の「火」を残すチャレンジを始動!

こんにちは。大阪 我孫子の日本料理店「まごころ料理 つる井」3代目店主の澤井哲治です。

「つる井」は昭和15年、祖父であり初代店主の澤井五平が創業いたしました。今年で81年を迎えます。

私はいま、「日本料理の文化」を残す大切さに気づいています。

コロナによって飲食業が大きな影響を受ける中、多くの飲食店の存続が危ぶまれる状況になっています。

つる井も営業を自粛しています。

でも、だからこそ、日本が長い時間をかけて築いてきた「日本料理文化」を、いまこそ残したい。

私は、みなさんがまだ知らない、つる井に息づく「日本料理のすばらしさ」と歴史を、映像と本で残したいのです。

そして、それを世界中に発信するために、このチャレンジを行います。

なぜ私が、こんなにも日本料理の文化を残したいと思っているのか。

それは、日本の「四季」と「食文化」の素晴らしさを五感で知ってもらう場所が日本料理店だからです。

例えば、竹の子料理を食べたとき、「ああ、春が来たんだな」と感じる。

これは、料理に秘められた「季節の変化を感じさせる力」があるからです。

日本特有の四季折々を映した料理、食べる人のことを思って調理手法を工夫する職人の真心の結晶。

それが集まっているのが、日本料理店なのです。

例えば、つる井には、「かぶらの風呂吹き」という名物料理があります。

かぶらを丸ごと使い、中に柚味噌を仕込んだものです。

かぶらといえば、11月〜2月に食べられる冬の食材。

この4ヶ月の間に、おいしいかぶらが取れる産地は、九州から本州へと北上します。

出始めの11月は九州産。寒さが増して霜が降りる2月には三重県産。

11月のかぶは小ぶりですが、2月には冬の霜を浴びて、甘みがぐっと増します。

料理人は、そうした食材の特性を知り尽くした上で、調理法を変化させながら「そのときに最もおいしい一品」を作り上げます。

つまり、同じ「かぶらの風呂吹き」なのに、11月と2月では味わいが違うのです。

季節の移ろいに応じて、同じ一品を、二度、三度と楽しんでいただける。

これが日本料理店のすばらしいところなのです。

こうした食の楽しみ方は、ご家庭ではなかなかできない。

知と技を磨いた料理人がいる日本料理店だからこそ、堪能できるものだと思います。

日本料理の醍醐味は、それだけではありません。

「料理人の真心」が詰まっているところです。

私が中学校に料理講師として招かれたときのこと。「きれいな盛り付け方を教えてください」「どうすればおいしく料理できますか」と、生徒達から質問を受けました。

このとき、私はこう答えました。

「毎日料理をすれば、必ず料理はうまくなります。でも、本当に大切なのは、皆さんが『人を想う心』です」。

つる井の料理人は、同じ料理であるにもかかわらず、お客様に合わせて味を変えてお出ししています。

その理由は、お客様によって趣向や好みの味、好き嫌いがまったく異なるからです。

まるで医師が患者さんごとにカルテを作るように、私たちも「お客様の好み」を、カルテのように記しています。

一人ひとりのお客様に、本当においしいと思っていただける料理を提供するために、そうしているのです。

これが「人を想う心」であり、料理をする上で本当に大切なことなのです。

盛り付けや調理の技術は、この心があるからこそ、上達するのです。

四季折々の食材や、料理人の心。これら「日本料理の醍醐味」をたくさんの方に伝えるために、私が何をしているのか。

それは「割烹スタイ