かけていた私にも希望が見えました。母が私の教育に熱心だったのは、私の将来に期待してくれていたからだと思います。だから私は母の期待に応えたかったのです。母が生きている間に何か特別な親孝行はできなかったかもしれないけど、母の期待に応え、将来の私が幸せになることが親孝行になると考えました。そのためにまずは進学の実現を目指し、兄の家族の支えもあり、なんとか進学することができました。
あしなが育英会の奨学金を知ると同時に、あしなが育英会の運営する学生寮の存在を知りました。神戸と東京にある、「心塾」と呼ばれる学生寮です。寮費月1万円2食付きで、留学生との共同生活ができると聞いて、心塾に入りたいとすぐに思いました。当時の私は外国語への関心が強く、大学でも外国語を学びたいと考えていました。その影響もあり、理念に「国際性」を掲げている心塾に興味を持ったのです。希望通り心塾に入塾することができ、3年生となった現在も心塾で暮らしています。
心塾の食堂にて 留学生と先輩との交流
あしなが学生募金事務局の局員として初めて街頭での募金活動を行ったのは、1年生の秋でした。私は心塾でアフリカ遺児の学生と関わることが多かったため、初めての募金活動でも彼らと一緒に街頭に立ちました。日本に来て間もない彼らが慣れない日本語で呼びかけをしている姿を見て、彼らが遠く離れた日本で努力していること、遺児たちが学ぶことに対してどのような想いを持っているかを知ってもらいたいと強く思いました。自分たちの声が街を歩く人に届いているのか不安になることもありますが、時には温かい言葉をかけてくださる方もいて、それが励みとなって活動を続けてくることができました。あしなが学生募金の活動は学ぶことのありがたみを実感し、支えてくださる皆さんに感謝を伝える機会でもあります。
私にとってのあしなが学生募金は、多くの人に遺児や奨学金について知っていただく機会であるだけでなく、様々な背景をもつ遺児との交流の場でもあります。活動を共にしてきた先輩や同期や後輩にも、当たり前ですがそれぞれの悩みや苦しみがあります。それを遺児という共通のバックグラウンドを持つ仲間として共有しやすい環境があしなが学生募金だと私は思っています。例えば、あしなが学生募金事務局の仲間でもある学生寮の同期や先輩。亡くなった親のことや今の自分のことを安心して話せる人は遺児にとって貴重だと思います。そんな人が周りにいる、仲間として活動する、という環境はあしなが学生募金に関わっていなければ得られなかったでしょう。
第99回あしなが学生募金の様子(2019年10月 生駒駅)
あしながの奨学金を知らなければ、今の私はありませんでした。今のように、大学で学ぶことも、似た境遇を持つ多くの仲間に出会うことも、できなかったでしょう。だから、私は知ってほしい。高校生のときの私のように、ただ知らなかったというだけで得られたはずの機会を逃さないでほしい。お金がないから進学を諦めている遺児がいるなら、諦めないでほしい。なぜなら私も進学できたから。進学して心強い仲間ができたから。
そのために私ができることは、あしなが学生募金の活動を通じて誰かに伝えることです。その誰かが、まだあしながの奨学金を知らない遺児かもしれない。その誰かを通じて、まだあしながを知らない遺児が救われるかもしれない。
あなたに私の話を頭の片隅に置いていただくだけでも、あしながについて知っていただくだけでも、それが遺児を救うきっかけになるかもしれません。もしあなたがこのページを見てあしながを知った遺児