はじめまして、『隠岐たまご』の東貴一郎(あずまきいちろう)です。
僕は今、故郷の隠岐の島で自給自足の生活をしています。山でたけのこやわらびなど山菜を収穫したり、海で素潜りや釣りでサザエやあじをとったりと、島の自然の恩恵を受けながら暮らしています。
自分でやっている畑でも、できる限り環境負荷の少ない形で農薬や化学肥料を使わずに野菜を育てています。たくさん収穫できた野菜はご近所さんにおすそ分けしたり、他の野菜を分けてもらったりと地域の人とのふれあいを大切にしながら暮らしています。
突然ですが、
現在僕は島の仲間たちと、にわとりに優しい飼育環境で育てたたまごの生産販売の準備を進めています。
その名も『隠岐たまご』
『隠岐たまご』では、「元気の出る食材は元気な生産者」が生み出してくれると考えています。
なので、にわとりたちには隠岐の島のきれいな空気の中で陽の光を浴びながら、にわとり本来の姿である走り回ったり砂遊びができる環境にこだわっています。
「食べた人が元気になる平飼いたまごを届けたい!」そんな私たちの想いを実現させるために、皆様の温かい支援をどうぞよろしくお願いします!!
本ページでは、僕たちがどうやって平飼いたまごに出会い、なぜ平飼いにこだわるのかをお話させてもらいたいと思います。
9分程で読めますので、ご覧いただけると嬉しいです。
僕は昨年の4月までの1年3ヶ月間ニュージーランドに住んでいました。現地の生活の中には『地球を大切にする』という意識が至るところに存在していました。どこのスーパーでもオーガニックの野菜やアニマルフェア※1のお肉や卵が簡単に手に入り、多くの雑貨屋さんにアニマルフェアやヴィーガンに配慮された日用品が当たり前のように並んでいます。
そんな時に出会ったのが『平飼いたまご』です。
※1動物に対して与える痛み・苦痛を最小限に抑えることで、飼育されているすべての動物の
「生活の質(Quality of life)」を高めようとする考え方
※2ビーガン=動物性食品をいっさい口にしない「完全菜食主義者」
何種類も陳列されている平飼いたまご(free range eggs)
日本でも『平飼いたまご』という言葉を見たことはありましたが、何なのかを考えたことありませんでした。平飼い(ひらがい)とは、積み上げられたケージににわとりを入れるケージ飼いに対して、「平ら」に「飼う」という意味で、にわとりを地面に放して飼う養鶏法のことです。平飼いのにわとりは、走り回ったり、本来の習性に沿った生活ができるので、健康になり、良い卵を産んでくれると言われています。
調べてみると多くのにわとりが過酷な飼育環境で育てられていることを知りました。
隠岐たまごのにわとりの様子
ケージ飼いのにわとりの様子(出典:shutterstock)
たまごを効率的に産ませるために身動きがほとんどとれないほど狭いケージの中でにわとりは一生を終える。これまで私が食べてきたたまごがそんな犠牲の上にあることを知り、平飼いたまごをより多くの人に知ってもらい、この現状を少しでも変えたいと思うようになりました。
にわとりのたまごのことをもっと知ってもらいたい思った僕は、滞在していた宿の庭を借りてにわとりを平飼いで育ててみることにしました。
にわとりとの生活は毎日が新鮮でした。働いていた農園で少し傷んだストロベリーやラズベリーをもらって食べさせたり、日曜日の朝のマーケットで野菜を売っているおばちゃんからキャベツの外葉をもらいに
わとりにあげていました。その時の勢いよくついばむ姿がとても可愛かったです!
庭で育ててるグレープの葉っぱが大好き
にわとりが家から脱走したときは大騒ぎ!「車にひかれてないかな。」と心配する私をよそに、にわとりは元気に地面をつつきながら歩いていました。見つかってよかったです。
「まだかな?まだかな?」
とたまごを産んでいないかチェックする日々が1ヶ月経った頃、ついににわとりがたまごを生みました!
初めてのたまごは市販のより少し大きくて割ってみると黄身が双子の卵でした!!
1ヶ月間ずっと成長を見守っていたので最初は「食べるのがもったいない」という気持ちになりました。でも「平飼いのたまごを食べるために育てたんだ」と最初の気持ちを思い出し、素材本来の味が一番わかる『たまごかけごはん』でいただくことにしました。
黄身は箸で掴むことができ、白身は黄身を包むようにこんもりと盛り上がっており、新鮮なのが一目瞭然でした。
たまごを生んでくれたにわとりへの感謝とおいしいたまごへの感謝。
ここまで大きく成長してくれたにわとりへの愛おしさ。
この時の感動を忘れられません。
「いただきます」
この時、はじめて心から言えた気がしました。
ほんとうにおいしかったです。
この感動体験から、「日本に帰ってからもにわとりを育てる!」と心に決めました。
こうして僕たちは日本に帰ってからもにわとりと暮らすようになり、現在は平飼いたまごを食べる感動を通じて多くの人に平飼いたまごを知ってもらうために、『隠岐たまご』の準備を進めています!
隠岐たまごでは3つのこだわりを持って、にわとりに優しいたまご作りを実現させます。2021年4月に卵を孵化させはじめ、5月にひよこを飼育し、2022年から卵の販売を予定しています。
こだわり① にわとりが本来の姿で過ごせる飼育環境
1つ目に、隠岐たまごではにわとりを屋外で放し飼いにします!
同じ平飼いでも、鶏舎内のみの飼育環境と屋外と鶏舎を併用したものがあります。隠岐たまごのにわとりは、日中は隠岐の島の山を自由に駆け回ることができます。走り疲れたら日向ぼっこをし、お腹が空いたら自由に野草や土の中の虫をついばむことができます。夜はイタチなどの天敵から身を守ることができる小屋で安心して眠ります。
このようにして毎日にわとりが隠岐の島の自然の中で自由に過ごせる環境を作ります。
話は変わりますが、日本はたまごをとても安く買うことができます。そして驚くことに日本人の年間たまご消費量は”世界二位”です。この大量消費を支える背景には『工場的養鶏』があります。日本の多くの養鶏場のにわとりはケージに入れられ10万~100万羽の規模で飼育されています。
さらに野鳥などの侵入を防ぐために窓がありません。鶏舎内では身動きが取れず、日光も浴びることができないにわとりは当然免疫力が低下し病気になる確率が高くなります。なので抗生物質などが添加された餌を与えられているようです。
残念ながらこの『工場的養鶏』が日本のたまご生産現場の大多数で、私たちが始めようとしている『平飼いたまご』の普及率は現在5%程度ととても少ないです。
隠岐たまごは、一生懸命たまごを産んでくれるにわとりたちが自然本来の姿に近い形で暮らせること。そうしてにわとりに分けてもらったたまごが安心安全に食べられる市場を作ることを約束します。
こだわり② 隠岐の島の循環の中でにわとりを育てる
2つ目に、隠岐たまごでは、”地域の循環”を大切にしています。
島で作られた食材やその副産物を
エサとして有効活用し、食品ロスを抑えることはもちろん、島の人々の暮らしの中に新しい循環を生み出します。
島には米農家さんがたくさんいます。米づくりの中では”米ぬか”や”2級米”が副産物として出てきます。これらは発酵させることで大変良質な飼料になります。発酵食品は、人間と同じようににわとりの腸内環境を整え免疫力を高める効果があるので、薬品に頼らない安心なたまご作りの助けとなります。
また隠岐の島は海に囲まれているので海産物が豊富です。そこで通常産業廃棄物とされてしまうのがカキやカニの殻。実はこれらには、にわとりが卵の殻を作る上で重要なカルシウムが多く含まれています。
春は食物繊維とミネラルが豊富なわかめの季節なので、良質な飼料として殻と一緒ににわとりに与えます。このように季節ごとに出てくる島の恵みをにわとりにも食べてもらっています。
さらに良質な飼料を食べたにわとりのフンは、野菜の有機肥料として畑で活用されています。これにより化学肥料に頼らない野菜作りができます。
現在は豆腐屋さんから出るおからや、醤油蔵から出る大豆粕など地域で捨てられていたものを発酵させ、にわとりのエサにする実験をしています。このように少しずつ隠岐の島全体の循環の一部に隠岐たまごを馴染ませていきます。
こだわり③ オスも大きくなるまで育てる!
3つ目に、隠岐たまごでは卵を生んでくれるメスのにわとりだけでなく『オスのにわとりの命』も大切にします!
当たり前のことではありますが、たまごはメスのにわとりからしか生まれません。これはとても残酷でショックなことなのですが、オスのひよこは生後すぐに処分されるか爬虫類の餌に回されることが多いです。
これにはメスがオス同士の喧嘩に巻き込まれないようにするためであったり、鳴き声がうるさいなど生態的な理由がありますが、やはり一番の理由は”大量生産”におけるコストダウンだと言われています。
隠岐たまごでは、孵卵器を用いてたまごから育てるので、生まれたにわとりはオス・メス関係なく大きくなるまで育てると決めています。少なくとも1年6ヶ月は育てて、大人のにわとりの時間を1年間は過ごしてもらおうと思っています。
こだわり②でお話した産業廃棄物と鶏フンを用いた有機肥料の例のように、オスを地域の循環を回す一部にしてあげることで活躍の場を作ることができると思っています。
今後もオスの持つ価値を常に探求して、更に長く育てる努力を続けていきます!
現在のアイディアでは上記の様な鶏フンを作ってくれる存在の他に、朝のモーニングコールなどを考えています。オスを育てるための良いアイディアを教えていただけると嬉しいです。
隠岐の島では『平飼いたまご』の知名度はまだまだ高くありません。
そこで友人に協力してもらい2020年11月28日に『島のたまごかけごはん屋さん』をオープンしました!
「休日だけど早起きした方」や「ボランティアに出かける前に立ち寄った優しい方」「ご家族で朝の時間をゆったり過ごす方」「人生はじめてたまごかけごはんを食べる方」などたくさんの方が来てくれました。
日曜日の7時~9時という早い時間なのに4日間で54名の方に来ていただき、平飼いたまごのことを伝えさせてもらいました。
ここで提供したたまごはきれいな”レモンイエロー色”です。
市販のたまごは、おいしそうな濃いオレンジ色の黄身にするために、エサにパプリカなど色素の強い食材を混ぜているといわれています。隠岐たまごは、にわとりに必要ないもの与えていない証である”レモンイエロー色
“を大切にしています。
今回皆様からいただいたご支援は、屋外でたくさん遊んできたにわとりが安心して眠れる木造鶏舎を建てる費用にあてさせていただく予定です。1棟を4部屋に分けて、計300羽を飼育する計画です。
この鶏舎を建てるためには、DIYや廃材などを活用して費用を抑えるとして、総額30万円必要なことがわかりました。土地の登記を変更するための資金は自分たちで用意したので、にわとり小屋の資金を皆さんにご支援いただきたいです。
【資金の詳細】
小屋の材料・・・・・・・・17万円
外周のネットなど・・・・・5万円
工具・・・・・・・・・・・5万円
CAMPFIRE手数料10%・・・3万円
【今後のスケジュール】
3月上旬:にわとり小屋建設スタート
4月上旬:有精卵の温めスタート・にわとり小屋完成
4月下旬:ひよこ誕生
5月上旬:ひよこを小屋に移動
6月~11月:平飼いでにわとりを飼育
12月:隠岐たまご産卵スタート
ここまで長文を読んでいただきありがとうございました。
まだ動き始めたばかりの隠岐たまごですが、僕たちがニュージーランドで学んだ感動やこれからの地球のことを考えた持続可能(サスティナブル)な暮らしのヒント。命を大切にする考え方を、故郷の自然の中でのびのびと育ったにわとりのたまごを通じてみなさんにお伝えしたいです。
遠くない将来、隠岐の島の子どもたちの給食にも隠岐たまごを提供したいと思っています。隠岐の島でも昔はにわとりを育てている家庭がたくさんありました。しかし現在は数件しか存在しておらず、多くの子どもたちはたまごを食べたことがあっても、にわとりと触れ合ったことがありません。なので隠岐たまごの鶏舎では、にわとりにエサをあげたり、たまごの収穫を体験できる場所にしたいと思っています。
「元気なにわとりって砂浴びするんだ!」「コケコッコーって鳴くのはオスだけなんだ!」「産みたての卵って温かいんだ!」など喜んでもらいながら、島の未来を担う子どもたちに、小さい頃から命の大切さや自然の循環を考える機会を作ってあげたいと思っています。
隠岐の島の優しさがたくさんつまった隠岐たまごのご支援をどうぞよろしくお願いします!!