ありません。
◆競争原理以外のスポーツの楽しさ
どうすれば子ども達が夢中になるのか。
指導現場へ行く回数が増えるにつれて、考えるようになりました。
子ども達の様子をよく観察していると、ある法則に気がつきます。
それは、子ども達は競争するのが好きだということです。
しかし、これには落とし穴があります。
それは、負ければ楽しくないということです。
何事も楽しくなければ、効率も落ちていき、いずれは離れてしまう。
これでは競争に勝てる子と勝てない子で、格差がどんどん広がってしまいます。
競争はスポーツの楽しさの一つの要因であることは間違いありません。
勝つために鍛え、上達し、仲間と協力するのです。
しかし、この楽しさだけに焦点を当ててしまうと、スポーツは限られた人のみ楽しむものになってしまいます。
大学2年には自分の所属する研究室を決めます。
実践的な幼児教育について学びたかった僕は、運命の出会いをします。
筑波大学体操コーチング論研究室
あらゆるスポーツ種目の中で、唯一優劣を決めない分野である一般体操の研究室です。
私が幼少期にやっていた器械体操とは少し違う領域になります。
スポーツの醍醐味である競争以外で人々を魅了するこの領域に、僕はすごく興味を持ちました。
大学院まで進学し、この研究室で幼児から高齢者まで様々な指導現場に出て、論文もいくつか書きました。その中で見えてきた肯定的なコーチングの極意は、以下の2点でした。
「遊戯的であること」
「失敗を許容すること」
人間は元々動きたいという欲求があると言われています。
その欲求があるからこそ、赤ちゃんは寝返りをうち、ハイハイをしてつかまり立ち、歩けるようになっていく訳です。
しかし、自我が芽生えると失敗が恥のように感じ、何事にも挑戦するのに億劫になってしまいます。
そして、いつの間にか動くことから遠ざかっていってしまうのです。
このプロセスは、どの年代のカテゴリーでも見受けられると思います。
これらの課題に対して、「遊戯的で」「失敗を許容する」アプローチが、人々を意欲的にし、自己肯定感を高めていきます。
◆アイスランド・サッカー協会の教育戦略
2016年、ヨーロッパで人口35万人(北海道旭川市と同等)の小国であるアイスランドが躍進します。
彼らの勝因は、小国であることを利用した、徹底した施設の充実と指導者の質の向上にこだわり、エリートを選抜するのではなく、数少ない国民の一人一人を大切に育てるというアイスランドサッカー協会の方針であると分析されています。
理論を学び資格を持つ指導者を、最も若い選手(未就学児)に担当させる事の重要性を理解し、いち早くその体制作りに成功した、その成果を目の当たりにした私は、いつの日か必ず自分の理想のスポーツ保育園を作ると決意しました。
◆なぜ今なのか
大学院を修了した後、私は学生時代からアルバイトをしていた街クラブに就職しました。
縁あって女子サッカーを担当することになり、教え子からはなでしこリーガーや全国大会常連校のキャプテンが誕生しました。また、畏れ多くもなでしこリーグ3部の監督も3年間務めました。
しかし、2020年スポーツ業界に大きな衝撃が走ります。
皆さんがご存知のように、コロナウィルスの世界的感染拡大による緊急事態宣言が発令されました。
不要不急の活動は全て自粛となり、我々が生業としていたスポーツは、生活に必要なものではないと排除されていきました。
なんとしてもスポーツの価値を広げていきたい。日常の中にスポーツ