ご挨拶
はじめまして。
のもとしゅうへいといいます。
現在は東京藝術大学に在籍していて、学生としてアートを学びながら、個人でイラストレーションや文章の執筆活動をしています。
昨年の春からSNSに投稿しつづけていた「誕生花のためのグラフィック」というイラストの連作が、今月11日に丸一年を迎え、完結しました。
(作品のアーカイブはこちらのリンクよりご覧いただけます▷「誕生花のためのグラフィック」)
このプロジェクトは、これまでに描いた365日分の誕生花を、一冊の本に収録して、画集として出版するとともに、作品を応援してくださっていた皆様のもとへお届けしたい、という想いからはじまったものです。
出版にあたって、本の編集作業やブックデザインなどを独自で学び、自分一人で手がけています。
しかし、現在就学中の学生であり、出版にかかるすべての費用を自力で用意することが難しいため、クラウドファンディングに挑戦することを決めました。
プロジェクト立ち上げの背景や経緯
以下は、「誕生花のためのグラフィック」が生まれた経緯と、その背景についてお話しします。
2020年4月12日に、アンズの花の絵を描きました。
当時はCOVID‑19がちょうど感染拡大を迎えていて一時のピークに達し、外出自粛が唱えられていた時期でした。
巷では星野源さんの「うちで踊ろう」なんかがもてはやされていて、みんな朝昼晩と家にいる。誰かと言葉を交わすこともなく、空虚な時間が横たわっているような、それが仕方なくも当たり前な生活。
いつ終わるとも知れないこの繰り返しに、誰もが疲弊してきているなとぼんやり思っていました。
「昨日から今日になっても何も変化がない」
「今日と明日に違いがない」
そういったことにやりきれない虚しさを感じていた中で、絵を描くことは小さな救いのようなものでした。
今日、何か一つ絵を描いたとしたら、その絵は、今日そのものとして存在しはじめるからです。
つまり、その絵を見れば描いた日のことを思い出せるからです。描いた絵は、楔を打ち込むように深く、ろうそくを灯すように明るく、日付に記憶の標を刻みます。一つ、また一つと、その日に花を植えていく。この灰色ともいえる日々に一日一つ、色を挿していくような。そうやって手を動かすことが、当時の自分にできた数少ないことだった気がします。
4月12日にアンズの花を描いたときはちょうど、そんな気持ちだったと思います。
それは小さな救い、少しの祈りのようなものでした。
何か形に残る実感のようなものが、その時はどうしても必要でした。
花の絵を描くことによって、少しだけ今日という日に意味が与えられた気がしました。不思議です。
単調で無変化なそれまでの今日が、昨日でも明日でもない今日になった心地がしました。
結果、それがその後しばらく続いていく「誕生花のためのグラフィック」の最初を飾る一枚となります。
花に関して、特別に造詣が深いわけでもないのですが、そのときから今まで花を描いています。
毎回、その日の花を描くたびに新しいものと出会うような気分になります。
描くという折に触れて、初めての花と出会い、その色や、持つ言葉の意味を知ります。
絵を描くこと自体に目的はないのかもしれません。
その本質は、描くことを通して、対象に近づいてやりとりをすることに夢中になっているだけのような気もします。
そのひとときのために、わずかな充足と喜びを覚えているのかもしれません。
当初の理由は、専ら、そういった形で自分を励ますこと、自分の過ごす今