はじめに・ご挨拶
鹿児島の南の田舎、南薩で農業や食品加工業を営んでいます「南薩の田舎暮らし」(屋号)の窪 壮一朗(fuhkyo)と申します。
私が住んでいる南さつま市大浦町は、鹿児島市街地から車で約1時間半、電車も高速道路も通っていない過疎地です。ピーク時から比べると人口が4分の1になったほど、高齢化と人口減少が激しいところです。
私は約10年前、父の故郷であるこの町に家族で移住し、農業を始めました。2013年には、農産品を加工して販売するため小さな食品加工所を建て、妻が地域の食材を使ったジャムやシロップを製造しています。
【参考】南薩の田舎暮らし
http://nansatsu.shop-pro.jp/
そうした活動のかたわら、地域の人と楽しむイベントもたびたび開催するようになりました。地元の小さな美術館「笠沙美術館」を借り切って行う、年に1度の「海の見える美術館で珈琲を飲む会」は、もう7年続いています。そうした場で、私たちは出張カフェとして、コーヒーを淹れたり、自家製の焼き菓子を提供したりしています(営業許可取得済み)。
「海の見える美術館でコーヒーを飲む会」の様子
また、南さつま市だけでなく鹿児島全体が、文化的なことが少ない地域です。そこで、出張カフェ活動の一環で、鹿児島市の古本屋さん「つばめ文庫」とコラボした「石蔵ブックカフェ」を隣町の加世田で毎月開催するようになりました。
これは、加世田の老舗お醤油屋さん「丁子屋」の石蔵を借り、「つばめ文庫」が本を販売し、私たち「南薩の田舎暮らし」がカフェ営業を行うブックカフェです。コーヒーやお菓子の提供だけでなく、ミニ講演会のシリーズ「石蔵アカデミア」を開催するなど、月に一度の文化的な場づくりを2017年から3年以上続けてきました。
【参考】石蔵ブックカフェ
https://so1ch1ro.wixsite.com/ishigura-bookcafe
「石蔵ブックカフェ」毎回地元の人を中心に数十人が来店する場になっており、本やコーヒーを楽しむだけでなく、歴史や地域文化のことについて話が咲く場ともなっています。その模様は、以前「日本農業新聞」にも取材していただきました(ほか取材多数)。
【参考】書店はなくても 本が読めるよ! 石蔵カフェ盛況 加工品も販売 移住就農の窪さん夫妻 鹿児島県南さつま市(日本農業新聞)
https://news.livedoor.com/article/detail/14424415/
今回、この取り組みを発展させ、大浦町で文化の拠点となるようなブックカフェを開業したいと思っています。
このプロジェクトが生まれたわけ
ことの発端は、近所の空き家をタダでもらったことでした。しかも親戚でもなんでもない人からです。その人から 農地を借りようとした際に、「近くに親類縁者が誰もいないから、家ごともらって」と譲られたのです。家をタダでもらうというと、都会の人はびっくりするかもしれませんが、大浦町では人家より空き家の方が多いくらいで、「タダでもいらない」と言われているのが空き家です。
もちろん私もその活用を考えていたわけではなく、しばらくほったらかしになっていました。しかしずっと放置しているわけにもいかないので、中にそのままになっていた家財道具の片付けや掃除を始めました。粗大ゴミの日毎に家具を処分し、少しずつ掃除をしていったため、片付けだけで約1年もかかってしまいました。
そして、片付けてみると、このまま取り壊すにはもったいないような、味のある家であることが分